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生産者日記

こころ野便り 農業について思う。再出発編 その7

翌日、警察から弟を保護していると連絡が有った。
両親は、弟が生きている事に、只々安堵した。
しかし、正気を失った弟にどう接すれば良いのか全く分からない。
面識の無いまま紹介してもらった助産婦さんに弟を迎えに行く車の中から電話を掛けた。
事情を話し十数分後に弟に対面する事を伝えた。

「どう接すれば良いのでしょうか。」
「先ず、無事で良かった。皆が、弟さんの事を大切に思っている事を伝えなさい。毅然とした態度で。」
とアドバイスをもらった。
緊張しながら入った警察署。
扉を開けると薄暗い廊下のベンチに腰掛ける弟、訝しげな眼差しで数人の警察官が見つめている。

弟もそれを睨み付けるようにしている。
ただならぬ雰囲気であったが、思わず弟の名を呼び「良かった。良かった。無事で良かった。」と自然と口にしていた。
裸足でどれだけ歩いていたのか汚れた足を拭いてやった。
弟の表情が和らぎ正気を取り戻してきた。
「家に帰ろう」と言うと弟は、頷いた。

警察署を後にする時年配の警察官が、「弟さんは、大丈夫ですよ。」と声を掛けてくれた。
様々な場面を見てきたであろうその警察官の一言は、有難かった。
父の教育は、スパルタ式だった。
弟は、勉強もスポーツもよく出来中学を卒業すると親元を離れ各学校を主席で卒業しそして進学していった。

しかし、人知れずその苦悩は、大きく親にも弱音が、吐けなかったのだろう。
この一件の後父は、変った。
あるがままの息子達を受け入れてくれるようになった。
「息子さんを救いたいのならお父さん、あなたが、変わってください。」
そんな忠告を父は、実行した。

父は、若いころ自分を映画「エデンの東」の主人公に準えていたと話していた。
祖父もそうとう厳しかったのだろう。

田中真弥

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